ホーム小宮山建の主張海洋深層水

 

海洋深層水は八丈島発展の起爆剤?

 

 八丈島近海の2地点で採取された海洋深層水の成分は、期待されていた海洋深層水としての優れた特徴をすべてそなえていることが明らかになりました。去る4月25日に開催された八丈町総合開発審議会(伊勢崎富治会長)で、平成13年度に八丈町が実施した採取調査の分析結果が、委託された調査会社から発表されたのです。八丈島近海を流れる黒潮の影響が危惧されていましたが、採取2地点のうち黒潮のただ中から採取したものは、さすがに水温は高めでしたが、成分面では全く遜色がないこともわかりました。

 富栄養性、低水温性、清浄性などの特性によって、水産分野はもとより、農業や医療、美容など多くの分野に限りない恩恵をもたらすものとして注目され、期待されている海洋深層水。すでに開発が進む高知、沖縄、富山等では年間数百億といわれる巨大な経済効果を生み出しており、日本の各地域で後を追う動きが見られます。しかし一方では、これから八丈島が追随しても競争に勝てないのではないか、などの否定的な意見も聞こえてきます。
 
確かに八丈島は、出遅れているだけでなく、都会から離れていて市場への輸送コストがかかる、海が荒れて取水パイプ敷設のコストが高くつくなど、いくつかの問題を抱えています。取水装置だけでも数十億という巨額の投資が必要とされるこの事業は、その利用計画をしっかりと立てて、採算性を見極めた上でなければ、おいそれと乗り出すわけにいかないことは当然です。しかし、開発・利用の可能性を探ることについては、決して消極的であってはならないと私は考えています。

 20世紀の産業発展は、石油、石炭、原子力など、埋蔵量が限られ、しかも廃棄物の処理が困難な資源に支えられてきました。その結果、人類は今、深刻なエネルギー問題、食糧問題、そして環境問題に直面しています。しかし、海洋深層水は、これらの問題を解決するための大きな可能性を持っているのです。自然の再生・循環系に逆らわず、しかもその資源量は膨大で、枯渇する心配がありません。したがって人類が21世紀を生き延びるための鍵は、この海洋深層水の開発が握っていると言ってもいいすぎではないと思います。
 特に、我が国の水産業にとっては重要な意味があります。漁業資源を求めて世界中の海を駆けめぐってきた日本の水産業は、今、多くの国から締め出され、これまで通りの操業が許されなくなってきました。否応なしに栽培漁業の道を拡大していかざるを得ないでしょう。しかし、これまでの養殖は魚の病気との闘いでした。養殖された魚は大量の薬剤にまみれており、その有害性に対する不安をぬぐえない現実があるのです。したがって、これからの栽培漁業の可能性を開くためにも、清浄性が高く、細菌に汚染されていない深層水を利用することが不可欠になっていくに違いありません。

 八丈島においても、海洋深層水を利用したテングサ、トコブシやシマアジなどの養殖に、大きな可能性があります。富栄養性と清浄性をそなえた深層水が、いきのいい海草や魚介類を短期間で育て上げる事は実証済みです。豊富なミネラル分を利用してこれまでの製品の付加価値を高める道もあるでしょう。あらたに健康食品を開発することも可能です。また、低水温性を利用した温度差発電にも魅力があります。さらに海洋深層水利用の産業が開花すれば、観光面にもすばらしい効果をもたらすことは言うまでもありません。
  問題はそのための施設を整備するのに必要なコストです。どの地点で安定して取水できるのか、そのために取水パイプはどういう構造が必要で、長さは何キロメートルになるのか、陸上施設の立地、製品の輸送ルート、さらには、その結果算出される製品の生産コストに対比して、製品の需要の大きさはどうかを綿密に詰めていく作業が必要です。

 八丈町は、東京都の支援も得ながら、そのための調査を本年度も継続して行うことになりました。総合開発審議会がそのために部会を設置し、今後の取り組みを推進していくことになっています。そして私は、8人の委員で構成されたその部会の部会長を命じられました。責任が重大ですが、この夢の大きい仕事の実現を全力でめざしたいと考えています。皆様のご協力をよろしくお願いします。

 

2002年6月9日 (小宮山たけし記)

 

 

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