八丈町デポジットは何を残したのか
継続・発展を多くの住民が期待
この制度の目的は環境美化、ゴミの散乱防止だけではありません。事業者自身にゴミ回収の責任を果たすことを求めていくことこそ、その最大のねらいでした。いくつかの商店は、シール貼りなどの負担があっても積極的にこの制度に参加し、流通業者としての誠意ある対応を示してくれました。また一方で、この制度に疑問を持ち、参加しなかった事業者の中にも、この制度を契機にして、別の方法でゴミ問題に対する事業者責任を果たそうとする動きが見られました。その意味でも、この制度を実施した意義は決して小さくはなかったと思います。
また、飲料メーカーに拡大生産者責任を求めていくことも重要なテーマでした。いくつかのメーカーはこの事業に関心を寄せて視察に訪れ、私たちとの話し合いも行われましたが、事業への協力を申し出るメーカーは現れませんでした。全島参加で、全住民、全流通業者が一体となってメーカーに要求していくことができれば、そのインパクトはメーカーが動かざるを得ない状況を生み出し、八丈町デポジットはまさに日本を変える大事業に発展し、ゴミ問題の究極的解決につながったのではないかと思います。そして、それを果たせなかった現実は、八丈町にとっても、日本にとっても惜しまれてなりません。
消極的だった町の姿勢
5年間続いた自由参加方式のこの制度のもとで、参加店にとっては、シール貼りの負担だけでなく、10円上乗せして販売することで生じる不参加店との競争力のハンディキャップも小さくはなかったでしょう。それでなくても不況の深刻化、観光の長期低迷の中で、全島参加への展望が開かれないまま、これ以上長きにわたって重い負担を負い続けることの厳しさは多くの参加店に共通していたはずです。
これまでに行われた住民や事業者の意識調査では、多くの皆さんがデポジットの意義を認め、全島で参加できないところに問題があることを指摘しました。そしてノンシールでの全島参加の実現を求める声が強く出され、私たちはそのための具体案についても積極的に提案してきました。しかし、この事業に反対する商店が一部でも存在するかぎり、強制力を伴う制度にしなければ全島参加の実現は不可能です。しかも、この事業を主導した前町長は再選を果たせず、むしろあまり事業の継続に熱意のない
現町長のもとでは、反対する事業者への説得はおろか、強制力を伴う制度の確立など望むべくもありません。その間、制度を始めて半年後に、八丈町にこの制度を推奨した都知事は退任し、その後、都の財政補助は次第に削減され、平成14年度からは完全に打ち切られました。そして今、町にとっては管理型最終処分場の建設、そしてそのための中間処理施設の整備など、莫大な資金を必要とする課題が山積しています。
メーカー責任の追求こそ課題
デポジット制度が始まることによって、確かに住民の環境問題に対する意識は大きく変化し、結果として、ゴミの散乱が減少しました。そして83%を超える回収実績で、デポジット制度の比類のない有効性が実証されるなどの大きな成果を上げることが出来ました。しかし、ついに事業終了という、島内外の多くの皆さんの期待を裏切る結果になったことは本当に残念です。今回、デポジット終了を打ち出した町長に対して、デポ制度で実現してきたアルミ缶、スチール缶、そしてペットボトルの飲料容器についてのリサイクルの継続は約束させました。そのために、町はペットボトルの分別収集のシステムを新たに作ることになります。そして、私たちは今後さらに、そのほかの資源ごみについても可能な限りリサイクルしていくことを求めて行くつもりです。
しかし、それだけでは八丈町デポジットの最重要のねらいであった拡大生産者責任の追求の道が見いだせません。八丈町デポジットがついに果たし得なかったこの目的をどのように実現していくかが、今後の大きな課題として残されたと思っています。それはやはり、全国的な運動と連動し、連携したものでなければならないことが明らかになったのではないかとも感じています。
2003年7月28日 (小宮山たけし記 :ごみかんニュース第9号掲載)