地域が連携した教育で子供を伸ばそう
この4月から学校週5日制が始まりました。新制度に移行するにあたり、遠山文部科学大臣が「学びのすすめ」を出しましたが、そこには「確かな学力の向上」のために、宿題や補習を奨励するという、まるで、これまで進めてきた「ゆとりの教育」を否定するかのような内容が含まれています。
受験教育の過熱や、詰め込み教育への反省から、これまで「生きる力」を伸ばすことをめざして、総合学習などの「体験的学習」を重視する「改革」が進められていました。4月からの新学習指導要領はその延長上にあったはずです。しかし、ここにきて次第に子供たちの学力低下が問題となってきました。基礎学力が不足している大学生が増えたり、日本の子供たちの学力が国際的にもランクを下げているなどの厳しい現実を前にして、学習内容の大幅な削減を伴う新指導要領への批判が高まってきたのです。
そうした中で、文部科学省は微妙に軌道を修正してきているのでしょうか。しかし、新指導要領と今回の「学びのすすめ」の整合性があまりはっきりしていないようで、教育現場にますます混乱を招くことが危惧されます。
子供たちに「生きる力」をつけていくことが、教育の果たす最も重要な役割であることに疑いはありません。したがって、さまざまの体験を通して学ぶことは大切であり、総合的学習がそのための有効な方法であることにもまちがいはないと思います。しかし、「生きる力」の教育は学力を重視する教育と対立するものではないはずです。総合学習も、基礎学力がついていなければ前に進めることができません。そして、そこから得るものもまた、学力の発展につながっていってこそ生きてくるのです。
この間の総合学習への取り組みなど、学校教育に関するさまざまの報告を見聞きしても、学力を最大限伸ばしていくことこそ、教育の根幹であることがますます明らかになってきています。
したがって今、「生きる力」をつけていく教育の要として学力を位置づけることこそが求められていることを、改めて強調しなくてはならないと思います。
今、学力低下への危機感を背景に、全国的に私立志向が高まってきています。八丈島でも中学、高校から都会に進学させたいと思う親が増えていることも事実です。しかし、八丈島だからこそできる教育法が必ずあるはずです。
小規模の学校がこれまでのように別々に小さい枠の中で教育するのではなく、島全体を一つのキャンパスと考え、小、中、高の連携、小学校同士、中学校同士の連携を強め、地域全体が協力して、互いに補完しあい、競い合っていけば、都会ではできない中身の濃い、血の通った教育が、効率よく進められるのではないでしょうか。中央から地方への権限移譲が進むなかで、八丈島独自の教育制度をつくる余地は広がっているのですから、そうした取り組みを是非とも実現していきたいと思います。
かつて経験したことのないような変革の時代に、何を子どもに身につけさせなければいけないかを見つけることは極めて難しくなっています。それでも、いや、そうであるからこそ、教育がますます重要になっています。次代を担う子供が、必要な能力をしっかりとつけていくために、教育は親の責任であると同時に大人全員の責任なのではないでしょうか。
2002年4月22日 (小宮山たけし記)