町の政策は民主的に決められているか
3月9日に開かれた第1回定例会で、浅沼町長が行った所信表明を受けて、24日の第2日目に8名の議員から一般質問が行われました。私はそのトップバッターに立ち、内容の乏しい所信表明への失望を告げた上で、財政危機の中の八丈町で、責任を持って町政に当たることを求めて、以下の質問を行いました。
一般質問(2004年3月24日)
昨年3月20日、米英軍が国連の同意も得ずにイラク攻撃を開始しようとしているとき、私たち八丈町議会は、議会の意志として、これに反対を決議しました。そして、それから1年が過ぎました。フセイン政権は倒れたものの、イラクでの戦闘は終結するどころか、混迷はますます深まり、暴力と暴力のぶつかり合いが激化するばかりです。アメリカ・ブッシュ政権が攻撃の大義名分とした、大量破壊兵器などイラクに存在しなかったことは、今や世界の常識となっています。その中で、先日、テロ攻撃を受けたスペインでは、米英に加担してイラクに派兵した与党が総選挙に敗れて政権を失いました。同じくイラクに出兵しているポーランドでも、首相が「アメリカにだまされた」として、イラク攻撃に正当性がなかったことを認めています。自衛隊の海外派兵に踏み切り、自ら戦争の当事者となったわが国の小泉政権は、国際的孤立を深めるブッシュ政権に対して、未だに無批判的に追随しています。そのため、日本は今、米英と敵対する勢力から、テロ攻撃の筆頭の対象者として名指しされ、日本国民は重大な脅威にさらされてしまっています。
確かにテロは許されてはなりません。これを根絶し、平和な世界を築くことに日本が貢献すべきであることは言うまでもありません。しかし、武力で敵をねじ伏せても、それによって平和がもたらされることなどあり得ません。この間のパレスチナでの絶望的な状況を見るまでもなく、暴力は暴力の連鎖を拡大するばかりであることは明らかなのです。 したがって、敵対する相手の言い分にも謙虚に耳を傾け、相互理解を深めることによって、暴力の連鎖を断ち切ることが真の平和への道なのです。だからこそ、先の大戦で多くの人命を犠牲にした貴重な体験に基づき、我が国は、戦争放棄を掲げる平和憲法を大切に守って来たと信じます。すなわち、
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」。
私は、あらためてこの日本国憲法第9条のかかげる平和主義の立場から、日本が世界平和に貢献すべきだと確信します。そして、昨年、本議会で米英のイラク攻撃に対して反対決議を上げたことの意義を改めて確認した上で、一般質問に入ります。
さて、平成16年度に向けての町長の施政方針が3月9日に示されました。財政状況が極めて厳しい中で町政を担当する町長、そして執行部の皆さんに、まずもってご苦労さまと申し上げます。
予算案の方も、国や都からの補助金・交付金が減額される中で、苦心惨憺して編成された予算であると推察いたします。そして基金を取り崩しても必要な歳出は確保せざるを得なかった事情も、大筋で理解できるところであります。
しかしながら、正直申し上げて、これが我が町の進むべき方向を示す方針なのかと思うと、到底満足できるものではない言わざるを得ません。なぜなら、示された施政方針のほとんどが、各課が計画する事業の列挙でしかないため、今の八丈町がかかえる重要課題は何なのか、そしてそれにどのように取り組んでいくのかについて、そこからはほとんど見えてこないからです。
今年度は空港拡張工事の完成にともなう人員の増加や、町政施行50周年事業などで財政需要が増加し、そのため歳入、歳出の総額は増加しましが、政策的判断で使える実質的な予算枠は減少しています。町の財政規模は、今後ますます縮小していくことが避けられないでしょう。深刻なのは、町の公共事業だけでなく、都から発注される公共事業の予算も大幅に削減されようとしていることです。かさねて、観光産業を始めとする島の経済活動の落ち込みも厳しさを増すばかりです。一方では少子高齢化が急激に進み、そして、島民の健康と安全を守るための福祉や環境問題など、行政は、担わなければならない大きな課題に直面しています。
こうした極めて厳しい状況のなかで、行政の舵取りを託されているのです。そのことを町長ははっきりと自覚されて、この難局を乗り切っていく明確な指針を、施政方針として示していただきたかった。そうすれば、この議会において、その方針を巡って意義のある討議を深めることができたと思うのです。
東京都が進める「第2次財政再建推進プラン」について町長は言及しました。八丈町財政に大きくのしかかる、この東京都の政策をしっかりと分析し、これに対応した八丈町の財政プランを作って行くことこそ、町の最大、かつ緊急の課題のはずだと思います。
また、島の産業振興にも、もっともっと危機感をもって対処し、町を挙げてこれに取り組んでいくための手だて、方向性についてもしっかりと示されるべきだったと思います。
しかし、そうした重要なテーマへに言及した部分はほとんどありません。したがって、今回示された施政方針に直対応した質問をするとなれば、それはきっと町長に聞くよりもむしろ各課長、場合によっては係長に聞くべき細かい話になってしまいます。そのように、総論がなく各論ばかりが羅列された施政方針でしかなかったことは、私としては本当に残念と言うほかありません。
しかし、基本的方向がはっきりとはわからないながら、観光対策を重視し、また行政効率の向上をめざすような姿勢は、この施政方針に示された具体策に感じ取ることもできなくもありません。とくに、行政効率を高め、ムダを廃して少ない予算で大きな効果を上げようという姿勢は、是非とも貫いていって頂きたい。そして、そのために、住民の皆さんにも積極的によびかけ、協力をお願いしながら町ぐるみで知恵を出し合って、できるだけお金をかけずに必要なことをやっていける町を創っていくべきだと思うのです。
そのための前提として、町は住民が何を求めているかをしっかりと把握し、住民の意思に依拠して行政を進めることが最も重要だと、私は思います。
そもそも、施政方針に掲げられた政策は、どのようなプロセスで決定に至っているのでしょうか。今回の機構改革で整理縮小しようとしている、各審議会や委員会の存在意義はどの程度のものなのでしょうか。
さきほど、憲法の掲げる「平和主義」について触れましたが、憲法には、さらに「民主主義」そして「基本的人権」を合わせて、日本国憲法の三大原則とされています。したがって八丈町においても、住民意思に基づく政策決定に、充分に配慮されなくてはならないことは言うでもないはずです。
その観点から、住民意志を政策決定にどのようにつなげていくべきかをまず伺い、次に、厳しい財政状況の中で、住民の求める福祉政策を実現していく手だてについてもお訪ねします。
(1)町の政策決定はどのような手順で行われているか。
町長が目指すという「住民が住みやすいと感じる町づくり」は、その前提として、いかに住民意思を把握し、偏りの無いように調整して政策決定につないでいくかが重要なはずです。しかし管理型最終処分場の建設や、学校統合問題などの経過を見るとき、現実には住民意思を政策決定につなげていく機能が、今の町のシステムに確立されているとは言い難いのではありませんか。財政基盤が縮小する中で、地方分権時代に住民意思に基づいた町政をどのように築いていくのかが重要になっていると思います。さて、
1.町長は、個人的に申し入れられる要望・意見を議会でよく口にしますが、八丈町では、町の機関での検討結果に基づいてなされた政策決定が、特定の個人やグループによる要求で変更されたことがありますか。あるとすればどのような事例ですか。
2.施政方針で「委員会・審議会の統合・整理」を計画していると述べています。これまでの各委員会・審議会の機能についてどう評価しているのですか。そしてどこに問題があり、それをどう改革するのでしょうか。
3.「情報化社会への対応」を掲げていますが、住民意思に基づく政策決定のためにも、新たな情報環境の有効活用を進めなくてはならないと思います。その中で、どのように情報公開を進め、意見集約のためのシステムを作っていくのでしょうか。あわせて、個人情報保護等のセキュリティ対策はどうなっているかも明らかにしてください。
(2)福祉政策が施設収容型からの脱却を求められている中で八丈町のビジョンはどうなっていますか。
施政方針の中で、福祉に関する施策が大きなウェイトを占めていたことは評価に値すると思います。そして、特別養護老人ホーム増床後も、多くの入所希望者が待機している状況は解消されていないなかで、家族介護教室の実施など、脱施設型の福祉サービスに触れている点は、大いに共感しているところです。じっさい国や都においても、高齢者福祉や障害者福祉は、施設収容型から、地域支援型へと移行する時代にあります。ここには財政難から責任を市町村に押しつけようとの問題点も感じられます。この流れのなかで、八丈町は将来へ向けてのどういう福祉施策を進めるのか、その方向を示して下さい。
1.高齢者が元気で日々を過ごす、人としての尊厳を重んじられる介護をどのように実現するのでしょうか。高齢者のためのグループホーム建設や在宅介護の支援を進める考えはありませんか。
2.障害を持っていても「地域の一員として安心して生活できる社会づくり」を目指し、「共同福祉作業所」を拠点として、福祉政策を充実させるといわれていますが、ボランティアによる奉仕活動によってようやく成り立っている八丈町の障害者福祉の財政基盤は極めて厳しいものがあります。これを改善するために、よりいっそうの支援策を求めたいとおもいますが、いかがでしょうか。