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三重県藤原町視察報告

”スロー”な公共事業

 

《視察先》     三重県員弁郡藤原町
           (2003年12月1日から町村合併で「いなべ市」に)
                    ○藤原町農業公園
                    ○農業集落排水施設

《参加者》  町議 : 田村六郎、山口英治、小宮山建

《日 程》      2003年9月29日

《視察概要》  藤原町は三重県の北西端、滋賀県、岐阜県との県境に位置する。人口7500人の小さな町で、この12月1日には周辺町村と合併し、新しく「いなべ市」(人口4万5600人)として再スタートしている。訪れたのは合併を控えた9月。視察対象は「藤原町農業公園」と農業集落排水施設。


●農業公園

規模・態様
 
38ヘクタールの梅林公園と18ヘクタールのエコ福祉広場からなる。
 広大な梅林が広がる梅林公園では梅の花を楽しんだり、実も加工するなどして、販


エコ福祉広場。すべて高齢者が設計し工事も自分たちで進めている。

売も行っている。 都市との交流として、クラインガルデン(家屋付き貸し農園)もあり、リフレッシュ空間として、退職後の人たちが、公園の管理・運営に携わっている。
 エコ福祉広場には、ガラス温室、パークゴルフ場、ボタン園、ショウブ園などがあり、名前のとおり、環境と、福祉を主に活動している。
 

施設の特徴
 
この施設は町の高齢者たちが自ら計画をたて、設計し、工事を進めている。工期は区切らず、建設はゆっくりと進められるが、コストはあまりかからない。それだけでなく、堆肥センター、廃油リサイクルなど、環境対策とも連動し、さらに介護を要する高齢者が花いじりを楽しみながらのショートステイ施設ともなっていて福祉施策の一端も担っている。
 「広がる”スロー”な公共事業」としてこの農業公園がNHKテレビの『クローズアップ現代』で紹介されたのは2002年の11月。税収の落ち込みや交付税の削減など 、自治体の財政難を背景にしながら、それを逆手にとって、業者に発注する代わりに技術を持った高齢者が自ら工事にあたったり、計画期間を限定しないで、工期に縛られずに理想のコミュニティ作りをめざしている。曲がり角に来ている日本の公共事業のあり方に一石を投じる「住民による住民のための公共事業」である。


堆肥センター。道路脇から刈り取られた草木の堆肥化を請け負い黒字経営だそうだ。

農業集落排水施設
 
旧藤原町も1955年に5つの村が合併して出来た町であり、集落は分散している。そのため、この町では1989年(平成元年)から、集落ごとに小規模排水設備が段階的につくられてきた。加入者 には工事費以外に1戸当たり30万円の負担金が課せられるが、完成した集落のほとんどが90%前後の加入率という好成績だ。
 また、施設はそれぞれの集落に近接して設置されているので、美観には特に配慮されていて、どの施設も、まるで一般住宅のような建物としてつくられているのも注目に値する。
 ところで、下水道は一般的には
「公共下水道」として国交省の補助を受けて設置されるが、これは市街地にしか認められない。それに対して「農業集落排水事業」とは、農水省から補助を受けるもので、農業振興地域が対象となっている。
 八丈町では合併浄化槽の採用を決めたが、問題は財源である。地形条件が適し、農業振興地域にあてまる地域には、このシステムの導入も検討の余地があるのではないかとの感を受けた。
 


一般住宅のような外形の排水施設は集落の中でも違和感がない。

 

2003年12月29日 (小宮山たけし記)

 

 

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