たけしの議会レポート(10)
貯金減、借金増の新年度予算
八丈町議会の平成16年第1回定例会
に提出された新年度の予算は、国や都からの財政支出の大幅な削減の中で、基金(貯金)の取り崩しや町債(借金)発行に頼る厳しいものになりました。しかし町長の所信表明は、この財政危機の中で、どう町を再生するかの方針がなく、平板な事業説明に過ぎない内容だったため、各議員の一般質問では失望の念や批判の声が続きました。
第1回定例会は3月9日、24日、25日、26日、29日、そして30日の計6日
を費やして開かれ、平成16年度の町の政策に関する町長の所信表明と、それに対する8名の議員による一般質問がありました。また、新年度の一般会計、特別会計の予算案は、これまでの町議会史上でも初めてという、4日にわたる長時間の審議の末、賛成多数で可決されました。
ところで、樫小・中小の統合問題で、町長は議会に対して三原中の敷地内に建設する案を示し、議会もこれを認める方向に進んでいました。しかし、その後の住民代表による協議会での異論を受けて強く求められた「三原中前に建設する」との要求を町長が受け入れる姿勢を示しました。そこで、議会として三原中前の建設可能性について、地形や財政面から検討するため、私を含む10名の議員によって特別委員会を設置し、審議することになりました。
第1回定例会の日程
3月 9日 町長所信表明、平成15年度補正予算
3月24日 一般質問(8議員)
3月25日 平成16年度一般会計予算
3月26日 平成16年度一般会計予算
3月29日 平成16年度一般会計予算
3月30日 個人情報保護条例ほか
第1回定例会への議員の出欠状況
9日、24日、25日、26日、29日は16名全員が出席。30日は菊池陽之助議員を除く15名の出席となりました。
公平で透明性のある政策決定を
◆一般質問の経過
3月議会は9日に始まり、30日に終わるという、極めて長い会期で開かれ、各議員から活発な意見や質問が出されました。その中で24日の一般質問には、建、
芳清、和鶴右衛、幸子、英治、松邦、孜行、睦男の
各議員の順に、ほぼ1日かけて繰り広げられました。
今回は山口英治議員が、3000名を超える住民の反対署名を無視して処分場計画を進める町の姿勢を厳しく追及しましたが、私は前回、処分場問題を取り上げたので、今回
は地元代表の山口議員にこの問題を任せました。そして、質問のトップに立った私自身は、(1)町の政策決定はどのような手順で行われているか、(2)
福祉政策が施設収容型からの脱却を求められている中で八丈町のビジョンは、の2点を、約50分かけて質問しました。
この一般質問の全記録はまもなく公開できるよう準備中ですが、とりあえず、質問全文を別掲しましたので、こちらもご覧下さい。→質問全文
9議員の一般質問のテーマ (質問順)
小宮山建
1.町の政策決定はどのような手順で行われているか?
○町の政策決定が、特定の個人やグループの要求で変更されたことがあるか
○各委員会・審議会の機能をどう評価し、どう改革するのか
○新たな情報環境を活かした意見集約のシステムを作れ。
2.福祉政策が施設収容型からの脱却を求められている中で八丈町のビジョンは?
○高齢者のためのグループホーム建設や在宅介護の支援を進める考えはないか
○厳しい障害者福祉の財政基盤改善のために、よりいっそうの支援策を求める
沖山芳清
1.雇用の確保、観光立島の施策を
2.樫立小・中之郷小統廃合での町長の手法は議会軽視だ
伊勢崎和鶴右衛
1.公園的な墓園の整備を
2.浮き魚礁について
奥山幸子
1.生活廃水処理の実態調査を
2.鳥インフルエンザについて
山口 英治
1.管理型最終処分場について
2.安定型処分場について
山下松邦
1.温泉療法と温泉地振興について
2.ブロードバンドについて
菊池孜行
1.町長の施政方針を聞いて
2.町立図書館の充実を
3.特区制度の活用を
菊池睦男
1.ロベの育苗体制の確立について
2.地魚の直売で漁民の収入増と消費者サービスを図れ
3.国や都の財政改革の影響について
◆私の一般質問内容と執行部の回答
(1)町の政策決定はどのような手順で行われているか。
町長が目指すという「住民が住みやすいと感じる町づくり」は、その前提として、いかに住民意思を把握し、偏りの無いように調整して政策決定につないでいくかが重要なはずである。しかし最終処分場の建設や、学校統合問題などの経過を見るとき、現実には住民意思を政策決定につなげていく機能が、今の町のシステムに確立されているとは言い難い。財政基盤が縮小する中で、地方分権時代に住民意思に基づいた町政をどのように築いていくのかが重要になっている。
町長は、個人的に申し入れられる要望・意見を議会でよく口にするが、八丈町では、町の機関での検討結果に基づいてなされた政策決定が、特定の個人やグループによる要求で変更されたことがあるか。あるとすればどのような事例か。
(答)三島憲治総務課主幹
特定の個人や、グループによる要求の事例として、平成13年4月、フェニックス作業所の建設についての要望があって、町はこれを受ける形で、この議会等ももちろん、予算等を確保する上で、その東京都の理解と支援をいただき八丈島共同福祉作業所を建設した例がある。
施政方針で「委員会・審議会の統合・整理」を計画していると述べているが、これまでの各委員会・審議会の機能についてどう評価しているか。そしてどこに問題があり、それをどう改革するのか。
(答)持丸孝松総務課長
今年度行政改革推進委員会において、事業の終了するもの、統合できるもの、また法律改正によって廃止になるもの等を検討し、審議を重ねた。そこで、前にも申しました56の委員会、審議会810名の構成組織を12団体225名の減ということで、16年4月1日から44団体585名に統合編成する。また、委員の報酬等についても、1日単位同額であったものを、会議時間などを考慮しながら検討をして、この件についても、報酬単価を1万1,800円、また8,000円の2段階に改定する。
「情報化社会への対応」を掲げているが、住民意思に基づく政策決定のためにも、新たな情報環境の有効活用を進めなくてはならない。その中で、どのように情報公開を進め、意見集約のためのシステムを作っていくのか。あわせて、個人情報保護等のセキュリティ対策はどうなっているかも明らかにされたい。
(答)持丸孝松総務課長
情報公開は、現在「広報八丈」を通じて、全家庭の提供に努めている。意見集約の一つの方法としては、広報はがき折り込みの広聴はがきにより、住民の方々からの意見をいただいており、これからもこの方法は継続していく。また、八丈町では情報化社会への対応を行うため、IT推進担当の主幹を配置し、また、電子情報係を新設して、八丈町情報化計画を作成する。その中で、情報公開意見集約システムづくりなどをどう対処していくのか検討をして、住民に身近な電子行政も目指していきたい。
セキュリティー対策は、個人保護条例を後日上程し、電子行政の関係では、オンライン結合による個人情報の提供制限、相手方に対しても個人情報保護のための規定も設けている。また、情報漏洩等に対する安全措置は、電子情報について八丈町内部でも、情報セキュリティー対策基準等を設けて対応していく。
(2)福祉政策が施設収容型からの脱却を求められている中で八丈町のビジョンは。
特別養護老人ホーム増床後も、多くの入所希望者が待機している状況は解消されていない。高齢者福祉も障害者福祉も、施設収容型から、地域支援型へと移行する時代にあって、八丈町の将来へ向けての福祉施策の方向を示せ。
「高齢者が元気で日々を過ご」し、人としての尊厳を重んじられる介護をどのように実現するのか。高齢者のためのグループホーム建設や在宅介護の支援を進める考えはないか。
(答)關村三男健康課長
グループホーム建設は、個人負担金額が月額15万円程度の高額であること、また入所予定者見込み数も今現在は未調査の状態であり、例年民生員の方により実施していただいている高齢者実態調査で、これらのサービス関係に希望をとるような形で16年度に実施して施策に反映させたい。また、個人の方がグループホームを建設したいとの相談も受けているが、今現在計画書等がまだ未提出の状態である。これらのことから、グループホームは八丈町介護保険事業計画にも示されているが、中長期的な課題として介護保険運営協議会で検討していきたい。
在宅介護の施策は、本年より在宅支援センターの中で在宅介護者の負担軽減を図るべく、家族介護教室等を実施し、介護予防についての支援を行っていく予定だ。また、昨年から実施している介護用品の支給、介護慰労金の支給等も継続して行う。これらに付随して、本年も健康教室にはB型のリハビリ、料理教室等を行い、町民の健康増進に努める。
障害を持っていても「地域の一員として安心して生活できる社会づくり」を目指し、「共同福祉作業所」を拠点として、福祉政策を充実させるというが、ボランティアによる奉仕活動によってようやく成り立っている八丈町の障害者福祉の財政基盤は極めて厳しい。これを改善するために、よりいっそうの支援策を求める。
(答)關村三男健康課長
障害福祉団体への補助金は、ちょんこめ作業所、フェニックス作業所、リハビリの会、障害友の会の4会が受給している。16年度予算では、これら4団体で4,118万9,000円を補助する予定になっている。ちょんこめとフェニックスが大きい金額で、ちょんこめ作業所2,266万1,000円、通所者1人当たり133万2,000円が支出予定であり、この中に人件費分1,790万円が含まれている。フェニックス作業所は1,804万6,000円で、通所者1人当たり69万4,000円、人件費分が1,600万円となる。
また、昨年から支援費制度というのが始まったが、この制度は障害者の方が自分に合ったサービスを選択して、地域で自立した生活ができるように支援を行うもので、この支援費の15年度の支出予定額総額として、今現在は2,440万円を支出予定している。
現在の町の財政状況下での財政支援については、特段のご理解とご協力をお願いする。
2004年5月10日 (小宮山たけし記)