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ブロードバンドで町づくり

 いよいよ八丈島にブロードバンドがやってくる。 ヤフーBBとNTT東日本が同時にこの3月からADSL(非対称デジタル加入者線)サービスを開始するのだ。昨年8月のソフトバンク孫社長の鶴の一声が、まさに夢のような急展開をもたらした。 離島だからこそブロードバンドが必要と、2年前から有志のみなさんと力をあわせて関係機関に働き掛けてきた。だが、正直言ってこんなに早く実現できるとは予想していなかった。 しかも年が明けると、NTTはさらに光ファイバー回線のサービスをも4月から提供すると発表した。
  光ファイバーの通信回線はスピードでADSLを大きく上回るだけでなく、安定性においても優れている。とくに、ADSLでは局舎からの回線距離が長くなるに連れ高速性が 失われていく。そして3kmを越えるとまったく用をなさなくなるため永郷地域などでは利用できない。また、近くにISDN回線が通っていると干渉が起こる。さらに、ADSLには上り回線のスピードが劣る制約もある ことなどのため、利用地域、事業内容によっては光でなくてはならない場合もある。だから今、ADSLとともに光ファイバーの環境が整うことは大いに歓迎すべきことだ。

 ところで総務省の統計によれば、日本国内のADSLの利用件数は昨年12月末で1027万件に達し、光ファイバーの81万件(11月末)、ケーブルテレビの242万件(同)を大きく引き離した。またADSL回線のシェアでは、ヤフーBBが36.0%と、NTT東西の36.7%を急追している。 技術開発が進みADSLのスピードが格段と向上している中で、安い料金とサービスの充実が売り物のヤフーBBの競争力が強いことは確かのようだ。おそらく この傾向は今後の八丈島の加入者動向にも反映するだろう。とくに、これまでのNTTの対応に島民の多くが不誠実さを感じてきたことから、ヤフーBBに肩入れする動きが強いようだ。
 
いずれにしろ、 この企業間競争に乗ることができたことが、こんなに早くブロードバンドを八丈島に実現することにつながったことは間違いない(この“競争効果”は、島の死活を握る航空運賃値下げ問題にも大いに教訓化しなければならない)。そして今、両社が 利用者の獲得のためにサービスの充実を競っている望外の好条件のなかで、 新しい通信環境を充分に活かした町づくりが進められなくてはならない。ブロードバンドが来たのに島の暮らしは何も良くならなかったら、それこそ全国の笑いものにな るだろう。

 首都東京への交通アクセスがよく、自然に恵まれ、しかも最先端の通信環境が整備されることによって、この島は大きく飛躍できる条件がそろ う。落ち込んだ観光を立て直 して新たな発展を切り開くために、流通改革を進め島の産品を島内外に売り込むために、そして医療、福祉、防災、教育、文化、環境などの行政サービスを充実させるために、あらゆる領域でブロードバンドを積極的に利用したい。私自身はとくに、 行政から住民への情報公開と、住民意思の行政への反映のために、この通信環境の果たす役割を拡大していく責任を感じている。そのため、近い将来の町議会中継へ向けて、今議場の映像化の検討をすすめている。
 とにかく、みんなの知恵を出し合って、このブロードバンド環境を最大限に活かして行かなくてはならない。
町は広報2月号に折り込んだアンケートで、住民の要望を調査しようとしている 。こうした試みはとても良いことであり積極的にやってほしい。だが、それだけでは不十分だ。とりわけ住民の強い要望があって実現するブロードバンド環境の整備には、住民の意向に依拠した施策が求められる。そのためには、民間事業者とも連携を強めながら、関係する住民の協力を引きだしていくため、行政、事業者、住民の協議機関を設け、そこで具体的施策を検討していくことが不可欠だ。

 町は15年度に職員によるIT対策の検討機関を立ち上げた。しかし、専従の職員がおかれなかったこともあってか、実質的な活動はほとんどできなかったようだ。また、16年度には町の機構改革にあわせて、専門の部署を発足させる計画があるとも聞いているが、これまでの流れから見て、そこにもあまり大きな成果は期待できない。 問題は、町の管理職にITに詳しい者がなく、職員にも少ないことにある。八丈町のIT化がおくれている大きな要因は、この人材不足にあると言える。だからこそこの分野では特に、 研修によって町の役職員の能力を高めるとともに、民間の人材を積極的に活用することが求められるのだ。
 すでに住民の間では、ブロードバンドの恩恵を個人的分野だけでなく、産業の発展につなげていこうという動きが見られる。ブロードバンドの普及を競っている企業も、新しい町づくりの提案には積極的だ。新しく設けられる町のIT担当の組織は、こうした民間の活発な動きに連動しなければ効率的な業務遂行はむずかしい。 今そのための協議機関の設置をすすめることが急務になっている。

2004年2月4日 (小宮山たけし記)

 

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